読者インタビュー

2024.10.31

わたしの日刊工業新聞 活用法(109)株式会社ウイル 代表取締役・山口 陵子 氏

山口 陵子 氏

新聞を読んで見えてくる方向性

 ウイルは、セラミックスや金属などの材料を母材に高温で吹き付けて皮膜を作る「溶射」の専業。1988年に創業し、創業社長である父親の体調悪化を受けて、東京から帰郷した山口陵子社長が04年に社長を継いだ。一般的な知名度はまだまだ低いが溶射は製鉄や製紙、化学などの工場には不可欠なもの。山口社長に聞いた。

-溶射とは、どのような技術でしょうか。

「大きな用途が製鉄や製紙工場で使われるロール。ロールの軸が摩耗すると、一から作り直すよりは金属を吹き付けて肉盛り補修した方が安くて早い。ケミカルタンクでは、応力腐食割れで穴が空いて薬品が漏れたりするのを、溶射で内部を被覆すれば防げる。身近なところでは、防錆防食目的で海沿いの橋梁にも施工されており、100年は持つと言われている」

-ウイルの得意分野は。

「溶射には大きく分けて、肉盛りなどの表面を硬くする用途と防錆防食性能を高める用途がある。当社は防錆防食、かつプラントなど現地での施工を得意としている」

―なかなか大変な作業のようです。

溶射作業の様子
溶射作業の様子

「溶射技術に詳しくないお客さんからは、『パパッと溶射して』などと言われることもあるが、そう簡単ではない。砂を吹き付けて汚れなどを落とすサンドブラストが必ずセットになるし、材料を溶かして吹き付けるため粉じんがすごい。作業員はマスクを着けホースで空気を送って作業する。マッハ2.5と超高速の熱風がでる溶射もある。粉じんや安全対策は必須だ」

「わたしたちの会社がなくなるとすぐ困るお客さんもいる。その割に重要性があまり知られていないように感じる。溶射業界全体で、現場で働く職人たちの地位向上と理解促進、待遇改善に取り組んでいきたい」

-日刊工業新聞はどう読んでいますか。

「化学や鉄鋼などお客さんの業界がどの方向に行こうとしているか、どんな分野に力を入れるかが分かる。船のタンクを施工することもあるので次の燃料は水素か、アンモニアか、とか。洋上風力でも溶射が普及するにはメーカーにスペックインしてもらう必要があり、注目している」

-本日はありがとうございました。


【略歴】1995年就実大文卒、出版社や美容業界での勤務を経て03年ウイル入社。04年社長。岡山県出身、51歳(2024年10月現在)。

【企業ファイル】

名称 株式会社ウイル
代表者 山口 陵子
所在地 岡山市東区楢原760の2
URL http://www.will-ok.com/
事業内容 事業内容溶射、ブラスト、ライニング、機械保全、製缶、配管、プラント設備設計-据付、機械加工、ピーニング

インタビュアー:岡山支局

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