わたしの日刊工業新聞 活用法(57)株式会社向洋技研 代表取締役・甲斐 美利 氏
〝異なる視点〟を参考に
向洋技研はテーブルスポット溶接機「MYSPOT」をグローバル展開している。1987年に市場投入。当時の常識を覆すユニークな構造が溶接業界で話題になった。現在は世界24カ国で累計2850台の納入実績を誇る。創業者で代表取締役の甲斐美利さんに、日刊工業新聞の活用法などを聞いた。
―通常のスポット溶接は2本の電極棒で加工対象物(ワーク)を挟んで加圧します。一方、MYSPOTはワークをテーブル型電極に置いて加圧するのが最大の特徴ですね。
「板金の現場で、銅板の上にワークを置いて溶接しているのを見て、テーブルそのものを電極にすることを思いついた。開発はコピー機の用紙箱を手がける会社から『作業負担を減らしたい』と相談されたのがきっかけ。箱の底や奥の溶接は無理な体勢を強いられるし、電極棒を押しつけるため腕がパンパンになる。ワークを支える補助員も必要だった。テーブル型電極でこうした課題を解消した。一人で楽に溶接できるようになり、とても喜ばれた」
―市場投入からこの間、高機能化していますね。
「最新機種はパネルコンピューターを搭載し、設計者と作業者が溶接条件などのデータを共有できるようにした。熟練でなくても高品質に仕上げられる。また自動化のための後付けロボットなども用意した。電源などの構成品からソフトウエアまでを自社開発できる強みを生かしている」
―2019年に新本社工場を建設し、攻勢をかける態勢が整いました。
「受注が堅調に伸びており、月産40台に増強した。フロアの柱を無くし、生産ラインを柔軟に変更できるようにした。通路にモノを置かない、ゴミを出さないといったことも徹底している。移転前は掃除に1時間ほどかかっていたので始業を8時にしていたが、新工場は15分間ほどで終わるので9時に遅らせた。こうした働き方改革にもつながった」
―日刊工業新聞を長くご愛読いただいていますね。
「ホンダロックに勤めていたころからなので、40年間になる。先輩に『日刊工業新聞を読んで新製品や新技術などの情報からヒントを得なさい』と指導されていた。まず1面、それから本業である機械面を読んだ後、電機面、自動車面、ロボット面などの記事をチェックしている」
―どのような記事に興味がありますか。
「女性の活躍に関する記事に興味がある。現場は人材不足だけに、女性を積極採用するための参考にしたい。またインタビュー記事の『記者の目』が好き。自分とは異なる視点が参考になる」
―本日はありがとうございました。
【略歴】1962年宮崎県立延岡向洋高校(現宮崎県立延岡工業高校)卒、同年ホンダロック入社。76年向洋技研創業、代表取締役。宮崎県出身、75歳(2020年3月現在)。
【企業ファイル】
名称 |
株式会社向洋技研 |
代表者 |
甲斐 美利 |
所在地 |
神奈川県相模原市緑区橋本台2-7-6 |
URL |
http://koyogiken.co.jp/ |
事業内容 |
テーブルスポット溶接機「MYSPOT」及び関連商品の設計・製造 |
インタビュアー:販売局