わたしの日刊工業新聞 活用法(55)佐藤精機株式会社 代表取締役社長・佐藤 慎介 氏
「物事の光と影」読み解く
佐藤精機は精密切削加工で国内有数の会社だ。幾多の困難を乗り越えて地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」―。このプロジェクトで、大気遮断型試料輸送容器を開発した実績を誇る。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の要求水準に応えられる高度技術は、企業からの信頼も厚い。代表取締役社長の佐藤慎介さんに、日刊工業新聞の活用法などを聞いた。
―試料輸送容器は高精度であることが求められますね。
「多様な材質の金属をマイクロメートル単位(マイクロは100万分の1)で加工できるのが強み。容器の構成部材であるステンレス鋼はもとより、石英ガラス、フッ素ゴムとも高精度に仕上がっている。また容器は機密性が重要。内部の雄ネジと雌ネジに隙間がないと焼き付けで回らなくなるし、逆に隙間が広いと緩む。機密性を保った状態で、ネジ同士が固くも緩くもならないように絶妙な隙間に調整した」
―最近は地元食品会社のまねき食品の周年記念品として合成木材のおわんをつくりました。新たなモノづくりへの挑戦でしたね。
「最初はアルミニウムを削り出してつくったが、先方が『来賓にこのおわんでそばを振る舞いたい』とおっしゃったので、持っても熱くない合成木材に変更した。おわんに文字を入れる必要があったが、旋盤では角張った文字にできない。このため、複合加工機で同時5軸加工した。おもしろい仕事だった」
―日刊工業新聞を10年間ご愛読いただいています。興味がある連載や面はありますか。
「火曜日に連載している『倒産学』が興味深い。スクラップや銅価格の変動を確認するため、商品市況面も目を通している。『信用情報』なども確認している。またSDGs面も読んでいる。他紙はマクロ視点でSDGs(持続可能な開発目標)を取り上げることが多いが、日刊工業新聞は企業に焦点を当てているのがよい」
―記事は経営の参考になりますか。
「参考にしているが、鵜呑みにしない。物事には光と影がある。あえて『実際は違うかもしれない』と想像する。
『本業以外をやり過ぎているのではないか』『事業を派手に展開しすぎているのではないか』などと読み解くと、後にその会社が傾いたり、倒産したりすることがある。こうした事例は、経営の戒めにもなる」
―新聞のどこに魅力を感じていますか。
「新聞は幅広い情報の収集に適している。一覧性があるし、驚きもある。情報の質はインターネットよりも新聞に分がある」
―本日はありがとうございました。
【略歴】1980年同志社大文卒。83年に佐藤精機に入社し、13年に2代目社長として就任。兵庫県出身、61歳(19年12月時点)。
【企業ファイル】
名称 |
佐藤精機株式会社 |
代表者 |
佐藤 慎介 |
所在地 |
兵庫県姫路市余部区下余部240-6 |
URL |
http://ssc-e.co.jp/company/ |
事業内容 |
各種金属の精密切削加工 |
インタビュアー:姫路支局